2025年『特許審査ガイドライン』改正:国外出願人が特に留意すべき事項
2026-01-27
(2026年1月1日より施行)本稿は、2025年の『特許審査ガイドライン』改正解読資料に基づき、中国で特許出願を行う国外出願人に最も影響を与える重要な変更点及び実務上の提言をまとめたものである。
一、 中核的な手続き上の変更(出願戦略に直接影響)
1. 「同一日出願」ルールの大幅な厳格化
変更点:2026年1月1日以降、同一出願人が同日に同一の発明創造について発明特許と実用新案特許を出願する場合:
-実用新案特許権を放棄する方法でのみ、発明特許の権利付与が可能となる。
-従来、発明特許出願の請求項を修正して実用新案との保護範囲を異なるものとすることで権利付与を得ることを可能としていた規定が削除された。
影響:
-重複付与問題を回避するため、発明出願の請求項を修正することに依存できなくなり、権利付与前に実用新案を放棄することを明確に選択しなければならない。
-出願時に戦略的配置を行い、発明と実用新案それぞれの保護価値を評価する必要がある。
-出願時に、同一の発明創造について他方の特許を出願したことをそれぞれ説明しなければならず、これを行わない場合は直ちに重複付与として扱われる。
2.分割出願における優先権主張の厳格化
変更点:原出願が優先権を主張していた場合でも、分割出願の提出時に願書において当該優先権の主張を明記しなかった場合:
-優先権を主張していないものと直接みなされ、審査官から通知書が発行される。
-出願人は後日、権利回復を請求することが可能であるが、期限および条件を満たす必要がある。
影響:
-分割出願の提出時には、優先権主張の完全性と正確性に特に注意を払う必要がある。
-主張の遺漏は優先権の喪失につながり、先占の優位性を失う可能性がある。
3. 返金メカニズムの調整:主動的から請求依拠へ
変更点:
-特許庁は主動的な返金を廃止し、当事者からの請求に基づく返金へと全面的に変更
-分割出願が実体審査段階に入らない場合の新たな返金対象を追加
影響:
-費用の状況を主動的に監視し、タイムリーに返金請求を行う必要がある。
-出願人情報が不完全な場合、返金プロセスが遅延する可能性がある。
二、 新興技術分野:厳格なコンプライアンスと高い品質要求
4. 人工知能/ビッグデータ関連特許における倫理及びデータ・コンプライアンス審査
追加事項:『特許法』第五条第一項(違法、公序良俗違反、公益妨害)の審査を明確化
-データ収集:『個人情報保護法』に適合しなければならず、データ取得が合法的かつコンプライアンスに準拠していることの証明(例:個人からの個別の同意取得)が必要。
-アルゴリズム倫理:アルゴリズムによる差別を禁止し、社会の公序良俗に反する意思決定ルールを設定してはならない。
審査事例:
【事例1】 商業施設が顔認証を隠し撮りし精密マーケティングに利用 → 『個人情報保護法』違反により拒絶
【事例2】 歩行者の性別・年齢に基づき保護対象を区別する自動運転の意思決定 → 社会の公序良俗違反により拒絶
影響:
-ユーザーデータ、個人情報に関わるAI関連特許出願には、詳細なコンプライアンス説明の提供が求められる。
-国外のデータコンプライアンス枠組み(GDPR等)は直接適用できず、中国の法律要件に合致しなければならない。
-倫理審査の基準は、中国の独自の法的・文化的特色を有する。
5. AI関連特許の明細書作成基準の大幅引き上げ
新設要件:
-モデル構築・訓練関連: モジュール、階層、接続関係、訓練ステップ、パラメータ等を明確に記載しなければならない。
-モデル応用関連: モデルが特定分野と如何に結合されるか、入力・出力データの設定及びその内的関連性を明確に記載しなければならない。
審査事例:
-【事例21】 どの血液指標及び顔面特徴ががん予測に関連するかを説明していない → 開示不十分により拒絶
影響:
-「ブラックボックス」式のAI発明は、開示十分要件を満たしにくい
-当業者が当該案を実施できることを証明する技術的詳細の提供が必要。
提言:
-明細書に、訓練データセットの特徴、モデルアーキテクチャ図、パラメータ設定表を含む具体的な実施例を提供する。
-入力・出力データの関連性について、単なる機能記述ではなく、技術的説明を行う。
-アルゴリズムのフローチャート、疑似コード等の補足資料の提出を検討する。
6. ビットストリーム(Bitstream)関連特許の明確なルール
変更点:
-単なるビットストリームは、特許保護の客体ではない(知的活動の規則に属する)。
-ビットストリームを記憶・伝送する方法:「動画符号化方法を実行する」ステップと「当該ビットストリームを記憶・伝送する」ステップの両方を含まなければならない。
-コンピュータ読み取り可能記憶媒体:「媒体+プログラム/命令+ビットストリーム+プロセッサが実行してビットストリームを生成する」という形式で作成しなければならない。
影響:
-動画符号化、ストリーミング分野の特許出願作成は、形式要件に厳密に従う必要がある。
-物のクレームの保護範囲が明確に制限される。
提言:
-ガイドラインが提供する標準的な作成テンプレートを採用する
-方法クレームが符号化ステップを含み、単なるデータ記憶と認定されないようにする。
三、 バイオテクノロジー:植物品種の保護範囲拡大
7. 「植物品種」の定義明確化及び保護範囲の調整
変更点:
-定義: 植物品種 = 人為的に選抜・改良された + 形態的特徴及び生物学的特性が一致している + 遺伝的形質が比較的安定している
-特許性: 一致性または安定性に達していない植物集団は植物品種に属さず、特許権を付与することができる。
-野生植物: 技術的処理を受けていない天然の野生植物は科学的発見に属し、特許不可。但し、人為的選抜・改良を受け、かつ産業的価値を有するものは特許可能。
影響:
ー有利点: 遺伝子組み換え植物、ゲノム編集植物が、品種の一致性基準に達していない場合、特許保護を得られる可能性がある。
-課題: 植物集団が一致性和安定性を有さないことを証明しなければ、植物品種除外規定を回避できない。
提言:
-広範な植物集団(例:「特定の遺伝子を含むイネ」)については、完全な植物体構造及び全ゲノムを限定することを避ける。
-明細書において遺伝的背景の多様性を記述し、その一致性を有さないことを論証する。
-遺伝子組み換え植物については、その集団の形質が安定していないことの証拠を提供する。
四、 紛争解決手続きの最適化
8. 無効宣告手続きのルール細分化
変更点:
-「一事不再理(一事不再理)」の原則: 「同一又は実質的に同一の理由及び証拠」と明確化され、請求者が単に表現を変えて無効を繰り返し提起することを防止。
-請求人資格: 名義を詐称する等の真実の意思表示によらない請求は受理しない(新設の不受理事由)。
-修正文案の提出: 特許権者が修正文案を提出する際は、全文置換頁及び修正対照表を添付しなければならない。同一手続きで複数回修正文案を提出した場合は、最終提出分が有効となる。
影響:
-有利点: 悪意のある無効請求を防止し、訴訟負担を軽減。
-課題: 無効手続きにおけるクレームの修正はより規範的でなければならず、そうでない場合は受理されない可能性がある。
提言:
-特許権者として、規範的な修正文案テンプレートを事前に準備する。
-無効請求人として、初回請求の理由及び証拠を十分に確保し、後日「実質的に同一」と認定されないようにする。
9. 審判手続きと特許権存続期間補償
新設:
-審判請求人が新たな理由を陳述し、又は新たな証拠を提出したことに基づき拒絶査定が取り消された審判手続きによって生じた遅延は、合理的な遅延に属し、特許権存続期間補償の対象とならない。
影響:
-実体審査段階において、できる限り意見を十分に陳述し、証拠を提出すべき。
-重要な証拠を審判段階まで保留すると、存続期間の損失を招く。
五、 国際出願の特別規定
10. PCT出願が国内段階へ移行する際の要点
変更点:
-優先権譲渡証明: 「先の出願の出願人全員」が署名又は押印しなければならない(単なる「譲渡人」ではなく)。
-証書情報: 特許証書に記載される「出願時」の情報は、実際には国際出願が中国国内段階へ移行した時の情報を指す。
影響:
-優先権譲渡文書が全ての元の出願人により署名されていることを確保する必要がある。
-証書情報の理解は、中国の法的概念と一致させる必要がある。